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2015年8月21日更新 | 一般財団法人 日本税務協会

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(1)

はじめに

 平成27年度税制改正においては、本年10月 1 日 に予定されていた消費税及び地方消費税の税率10 %への引上げ時期が平成29年 4 月 1 日に延期され るとともに、地方創生に取り組む一環として行う 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充や国外事 業者が国境を越えて行う電子商取引に係る課税関 係の見直しが行われるなど、過去にない範囲で消 費税制度の改正が行われています。特に、電子商 取引に係る課税関係の見直しについては、いわゆ るリバースチャージ方式など従来の消費税制度に はなかった仕組みが創設されたことから理解を難 しくしている面もあります。

 本稿は、これらの改正を含む消費税関係の改正 内容を紹介するものです。

 なお、本稿の改正内容を含む「所得税法等の一 部を改正する法律」は、去る 3 月31日に参議院本

会議で可決・成立し、同日に平成27年法律第 9 号 として公布されています。また、関係政省令もそ れぞれ次のとおり公布されています。

・ 消費税法施行令等の一部を改正する政令(平 成27年政令第145号。以下「改正消令」といい ます。)

・ 消費税法施行規則等の一部を改正する省令 (平成27年財務省令第27号。以下「改正消規

則」といいます。)

・ 消費税法施行令第14条の 2 第 1 項、第 2 項及 び第 3 項の規定に基づき財務大臣が指定する資 産の譲渡等を定める件の一部を改正する件(平 成27年財務省告示第108号)

・ 消費税法施行令第50条第 2 項、第54条第 5 項、 第58条第 3 項及び第71条第 5 項並びに消費税法 施行規則第 5 条第 3 項及び第16条第 3 項の規定 に規定する保存の方法を定める件の一部を改正 する件(平成27年財務省告示第109号)

一 消費税率(国・地方)10%への引上げ時期の変更等

Ⅰ 消費税率引上げの施行日の変更

1  改正の経緯等

 平成24年 8 月、社会保障の充実・安定化、並び にそのための安定財源の確保と財政健全化の同時 達成を目指す社会保障・税の一体改革の一環とし

て、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の 抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正 する等の法律」(平成24年法律第68号。以下「抜 本改革法」といいます。)が成立し、同月22日に 公布されました。この法律は、消費税収の使途を 明確化(消費税の収入については、制度として確 立された年金、医療及び介護の社会保障給付と少 目    次

一 消費税率(国・地方)10%への引上げ 時期の変更等������������ 825 二 国境を越えた役務の提供に係る課税の

見直し��������������� 829

三 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸 出物品販売場制度)の見直し����� 851 四 国外事業者による芸能・スポーツ等の

(2)

子化に対処するための施策に要する経費に充てる 旨を規定)するとともに、平成26年(2014年) 4 月と平成27年(2015年)10月の 2 回にわたる消費 税率引上げ等を内容としています。

(注) 地方消費税の税率については、「社会保障の 安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革 を行うための地方税法及び地方交付税法の一 部を改正する法律」(平成24年法律第69号)に おいて、消費税と同様に二段階で引き上げる こととされています。

 消費税率の引上げについては、経済に与える影 響や事業者の事務負担等を総合的に勘案し、平成 26年 4 月 1 日に 4 %(地方消費税を含めた税率は 5 %)から6.3%(地方消費税を含めた税率は 8 %)に、平成27年10月 1 日に6.3%(地方消費税 を含めた税率は 8 %)から7.8%(地方消費税を 含めた税率は10%)に、二段階で引き上げること とされており、第一段階目の税率引上げについて は、法律の規定どおり、平成26年 4 月 1 日に実施 されました。

 しかし、平成27年10月 1 日に予定されていた 7.8%(地方消費税を含めた税率は10%)への税 率引上げについては、経済状況等を総合的に勘案 し、その時期を平成29年(2017年) 4 月 1 日に変 更することとされました。他方で、社会保障制度 を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、 市場及び国際社会における国の信認を確保する観 点から、抜本改革法附則第18条第 3 項に規定され ていたいわゆる景気判断条項については、削除す ることとされました。

2  改正の内容

 第二段階目の税率引上げについて規定している 抜本改革法第 3 条の施行日(抜本改革法附則 1 二)を、平成27年10月 1 日から平成29年 4 月 1 日 とする改正が行われました。

 具体的には、「所得税法等の一部を改正する法 律」(平成27年法律第 9 号。以下「改正法」とい います。)第18条において、抜本改革法第 3 条の

施行日(抜本改革法附則 1 二)を改正するほか、 所要の整備が図られています。

 なお、この改正にあわせて、抜本改革法附則第 18条第 3 項(消費税率の引上げに当たっての措 置)に規定されていたいわゆる「景気判断条項」 が削除されています。

3  適用関係

 この改正は、平成27年 4 月 1 日から施行されて います(改正法附則 1 )。

 この改正によって、7.8%(地方消費税を含め た税率は10%)の税率は、別段の定めがあるもの を除き、平成29年 4 月 1 日(以下「平成29年施行 日」といいます。)以後に、国内において事業者 が行う資産の譲渡等、国内において事業者が行う 課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨 物について適用し、平成26年 4 月 1 日から平成29 年施行日の前日(平成29年 3 月31日)までの間に、 国内において事業者が行った資産の譲渡等、国内 において事業者が行った課税仕入れ及び保税地域 から引き取った課税貨物については、従前の例 (旧税率6.3%。地方消費税を含めた税率は 8 %) によることとされています(改正法第18条による 改正後の抜本改革法附則第15条)。

Ⅱ 消費税率引上げに伴う経過措置に

係る所要の整備

1  改正前の制度の概要

 抜本改革法附則第16条(抜本改革法第 3 条の規 定による消費税法の一部改正に伴う税率等に関す る経過措置)においては、平成27年10月 1 日に予 定されていた第二段階目の消費税率引上げに伴う 税率等に関する経過措置が規定されていました。  具体的には、第一段階目(平成26年 4 月 1 日施 行)の税率引上げに伴う経過措置について、必要 な読替えを行った上で準用することとされていま した(抜本改革法附則16①~③)。

(3)

消費税法施行令の一部を改正する政令(平成26年 政令第317号。以下「26年改正政令」といいま す。)の附則においても一定の経過措置が規定さ れていました。

〔抜本改革法附則第16条第 1 項において準用され ている経過措置〕

・ 附則第 3 条(小規模事業者に係る納税義務 の免除等に関する経過措置)

・ 附則第 5 条第 1 項~第 5 項(旅客運賃等の 税率等に関する経過措置)

・ 附則第 6 条第 1 項(長期割賦販売等に係る 資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合にお ける税率等に関する経過措置)

・ 附則第 7 条第 1 項(工事の請負に係る資産 の譲渡等の時期の特例を受ける場合における 税率等に関する経過措置)

・ 附則第 8 条第 1 項及び第 3 項(小規模事業 者に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける 場合における税率等に関する経過措置) ・ 附則第 9 条(仕入れに係る対価の返還等を

受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の 特例に関する経過措置)

・ 附則第10条(納税義務の免除を受けないこ ととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額 の調整に関する経過措置)

・ 附則第11条(売上げに係る対価の返還等を した場合の消費税額の控除に関する経過措 置)

・ 附則第12条(貸倒れに係る消費税額の控除 等に関する経過措置)

・ 附則第13条第 2 項(課税資産の譲渡等につ いての中間申告等に関する経過措置)

・ 附則第14条第 1 項、第 3 項及び第 4 項(国、 地方公共団体等に対する特例に関する経過措 置)

〔抜本改革法附則第16条第 2 項において準用され ている経過措置〕

・ 附則第 5 条第 6 項(経過措置の適用を受け

た売上対価の返還等及び貸倒れに係る消費税 額の控除に関する経過措置)

・ 附則第 5 条第 7 項(経過措置の適用を受け た課税仕入れに係る仕入税額控除等に関する 経過措置)

・ 附則第 5 条第 8 項(通知義務)

〔抜本改革法附則第16条第 3 項において準用され ている経過措置〕

・ 附則第16条第 2 項において読替準用する附 則第 5 条第 6 項(経過措置の適用を受けた売 上対価の返還等及び貸倒れに係る消費税額の 控除に関する経過措置)

・ 附則第16条第 2 項において読替準用する附 則第 5 条第 7 項(経過措置の適用を受けた課 税仕入れに係る仕入税額控除等に関する経過 措置)

・ 附則第16条第 1 項において読替準用する附 則第 7 条第 1 項(工事の請負に係る資産の譲 渡等の時期の特例を受ける場合における税率 等に関する経過措置)

〔政令で措置されている主な経過措置〕

・ 26年改正政令附則第 5 条(予約販売に係る 書籍等の税率等に関する経過措置)

(4)

ます(26年改正政令附則 5 ⑤)。

・ 26年改正政令附則第13条(国又は地方公共 団体に準ずる法人に対する特例に関する経過 措置)

・ 26年改正政令附則第14条(国、地方公共団 体等の仕入れに係る消費税額の特例に関する 経過措置)

2  改正の内容

 上記経過措置については、第二段階目の税率引 上げの施行日が平成29年 4 月 1 日に変更されたこ とに伴う見直しを行うとともに、平成27年度税制 改正において“いわゆるリバースチャージ方式” (注)が導入されたことに伴う所要の整備が行わ れています(改正法第18条による改正後の抜本改 革法附則第16条)。

 また、リバースチャージ方式の導入に伴い経過 措置の読替部分が複雑になることから、平成27年 度税制改正において、読替えに関する規定部分が 表形式に改められていますが、各経過措置の考え 方に変更はありません。

(注) 平成27年度税制改正においては、国境を越 えた役務の提供に係る課税の見直しが行われ ており、リバースチャージ方式(納税義務者 が資産の譲渡等を行う事業者から、課税仕入 れを行う事業者に転換される方式)による課 税が平成27年10月 1 日から施行することとさ れています。この改正を踏まえ、第二段階目 の税率引上げ前後に行われるリバースチャー ジ対象取引に係る経過措置が、改正法第18条 による改正後の抜本改革法附則第16条の 2(特 定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場

合の消費税額の控除に関する経過措置)とし て設けられています。

3  適用関係

 この改正は、消費税率引上げの施行日の変更に 係る改正とともに、平成27年 4 月 1 日から施行さ れています(改正法附則 1 本文)。

Ⅲ その他

 抜本改革法第 3 条による第二段階目の税率引上 げ時期が平成29年 4 月 1 日に延期されたことを踏 まえ、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のた めの消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関す る特別措置法」(平成25年法律第41号。以下「転 嫁対策特別措置法」といいます。)の期限が延長 されました。

(5)

二 国境を越えた役務の提供に係る課税の見直し

1  改正の背景

 改正前の制度においては、国境を越えて行われ る一定の役務の提供について、消費税の課税対象 であるか否か(国内取引であるか否か)を、役務 の提供に係る事務所等の所在地に着目して判断す ることとされていました。このため、通常、役務 の提供者が国内事業者である場合には消費税が課 税される一方、役務の提供者が国外の事業者であ る場合には消費税が課税されず、同様のサービス であっても、提供者によって課税関係が異なると いう問題が生じていました。

 平成27年度税制改正においては、こうした国内 外の事業者間の競争条件の不均衡を是正する観点 から、平成27年10月 1 日より、国外の事業者が国 境を越えて行う電子書籍・音楽・広告の配信等の 電子商取引に、新たに消費税を課税することとさ れました。

 なお、インターネット等を通じた電子商取引が 拡大する中で、OECD等の国際機関においても、 国境を越えた役務の提供に係る付加価値税の課税 の在り方について、「仕向地主義」(消費がなされ る仕向地に課税権があるとする原則)を適用する 方向で議論が行われており、今回の改正は、こう した国際的な議論の方向性にも沿ったものと考え られます。

2  改正前の制度の概要

⑴ 課税対象及び納税義務者

 国内取引に係る消費税の課税対象については、 「国内において事業者が行った資産の譲渡等」 (旧消法 4 ①)と、また、納税義務者について は、「事業者は、国内において行った課税資産

の譲渡等につき、この法律により、消費税を納 める義務がある。」(旧消法 5 ①)と、それぞれ 規定されています。

 したがって、消費税の納税義務が発生する取 引は、次の要件を満たす取引となります。 ① 国内取引であること。

② 事業者が行うものであること。

③ 資産の譲渡等のうち、消費税法第 6 条第 1 項の規定により消費税を課さないこととされ るもの以外のものであること。

 なお、資産の譲渡等とは、事業として対価を 得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務 の提供をいいます(消法 2 ①八)。

⑵ 内外判定基準

 資産の譲渡等が国内で行われたか否かの判定、 すなわち、“国内取引であること”の判定基準 (以下「内外判定基準」といいます。)について は、消費税法第 4 条第 3 項に規定が設けられて います。

(6)

区 分 判定場所 原則(政令で定める場合を除く。) 役務の提供が行われた場所 政令で定める場合

国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客又

は貨物の輸送 旅客又は貨物の出発地若しくは発送地又は到着地 国内及び国内以外の地域にわたって行われる通信 発信地又は受信地

国内及び国内以外の地域にわたって行われる郵便又

は信書便 差出地又は配達地

保険 保険事業者(保険契約の締結の代理をする者を除 く。)の保険契約の締結に係る事務所等の所在地 情報の提供又は設計 情報の提供又は設計を行う者の情報の提供又は設計

に係る事務所等の所在地 専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査、

企画、立案、助言、監督又は検査に係る役務の提供 で生産設備等の建設又は製造に関するもの

生産設備等の建設又は製造に必要な資材の大部分が 調達される場所

上記以外で国内及び国内以外の地域にわたって行わ れる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所 が明らかでないもの

役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の 所在地

3  改正の内容

 上記のとおり、役務の提供のうち、“情報の提 供又は設計”や“役務の提供が行われた場所が明 らかでないもの”に係る内外判定については、役 務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の 所在地が国内にあるか否かによって行われていま した。このため、国外の事業者が、国境を越えて 国内の事業者や消費者に対して行う電子書籍・音 楽・広告の配信等の役務の提供については、国外 取引とされていましたが、結果として、こうした 役務の提供については、提供者の違い(正確には、 役務の提供に係る事務所等の所在地の違い)によ って最終的な税負担に差異が生じることとなり、 国内外の事業者間で競争条件に歪みが生じている 状況にありました。

 平成27年度税制改正においては、こうした国内 外の事業者間で競争条件に不均衡が生じている現 状を是正する観点から、国内外にわたって行われ る電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引に ついて、以下に掲げる改正が行われました。

(注) 輸入取引に係る消費税(保税地域から引き 取られる外国貨物に課される消費税)は、本 改正の対象外であることから、以下の解説にお いては特に断りをせずその記述を省略します。

⑴ 内外判定基準の見直し

 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して 行われる著作物の提供その他の電気通信回線を 介して行われる役務の提供を「電気通信利用役 務の提供」と定義した上で(消法 2 ①八の三)、 旧消費税法第 4 条第 3 項第 2 号に規定されてい る役務の提供に係る内外判定基準については、 「電気通信利用役務の提供」とそれ以外に分け

て規定されました。

 具体的には、次に掲げるとおりとされていま す(消法 4 ③二・三)。

〔 4 条 3 項 2 号〕

 役務の提供である場合(電気通信利用役務 の提供を除く。)

⇒ 当該役務の提供が行われた場所(当該 役務の提供が国際運輸、国際通信その他

(7)

の役務の提供で当該役務の提供が行われ た場所が明らかでないものとして政令で 定めるものである場合には、政令で定め る場所)

〔 4 条 3 項 3 号〕

 電気通信利用役務の提供である場合 ⇒ 当該電気通信利用役務の提供を受ける

者の住所若しくは居所(現在まで引き続 いて 1 年以上居住する場所をいう。)又 は本店若しくは主たる事務所の所在地

 すなわち「電気通信利用役務の提供」につい ては、従来、役務の提供を行う事業者の役務の 提供に係る事務所等の所在地で内外判定が行わ れていましたが、改正後は、当該役務の提供を 受けた者の住所等で判定することとなります。 他方で、電気通信利用役務の提供に該当しない 役務の提供に係る内外判定基準については、従 来どおりとされています。

 この改正によって、これまで国外取引とされ ていた『国外の事業者が、国外の事務所等から 国内の事業者・消費者に対して行う電気通信利 用役務の提供』が“国内取引”に位置付けられ ることとなり、提供者の違いによる内外判定の 差異が解消されることとなりました。

(注) 平成27年度税制改正においては、旧消費税 法施行令第 6 条第 2 項第 5 号(情報の提供又 は設計に係る内外判定基準)又は同項第 7 号 (役務の提供に係る内外判定の包括条項)の規 定により内外判定が行われていた電気通信利 用役務の提供に係る内外判定基準が法律で規 定されたことを踏まえ、政令に規定する内外判 定基準について所要の整備が行われています。 ① 電気通信利用役務の提供の範囲

 「電気通信利用役務の提供」の定義につい ては、消費税法第 2 条第 1 項第 8 号の 3 にお いて次のように規定されています。

(参考) 消費税法

第 2 条第 1 項第 8 号の 3  資産の譲渡等のう ち、電気通信回線を介して行われる著作物

(著作権法(昭和45年法律第48号)第 2 条第 1 項第 1 号(定義)に規定する著作物をい う。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係 る取引を含む。)その他の電気通信回線を介 して行われる役務の提供(電話、電信その 他の通信設備を用いて他人の通信を媒介す る役務の提供を除く。)であつて、他の資産 の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の 譲渡等に付随して行われる役務の提供以外 のものをいう。

 具体的には、インターネット等の電気通信 回線を介して行われる電子書籍・音楽、ソフ トウエア(ゲーム等の様々なアプリケーショ ンを含みます。)の提供、ネット広告の配信 などの役務の提供や電気通信回線を介しての み行うコンサルテーションなどの役務の提供 が広く該当することになりますが、次に掲げ る役務の提供は、電気通信利用役務の提供に 該当しませんので注意が必要です。

イ 電話、電信その他の通信設備を用いて他 人の通信を媒介する役務の提供

 電話やFAX、電報、データ伝送、イン ターネット回線の利用など、他者間の情報 伝達を単に媒介する役務の提供は、電気通 信利用役務の提供には該当しません。 ロ 他の資産の譲渡等の結果の通知その他の

他の資産の譲渡等に付随して行われる役務 の提供

(8)

【電気通信利用役務の提供に該当する取引の例】 ・ 電子書籍、電子新聞、音楽、映像、ソフ

トウエア(ゲーム等の様々なアプリケーシ ョンを含みます。)などの配信

・ クラウド上のソフトウエアやデータベー スなどを利用させるサービス

・ インターネット等を通じた広告の配信・ 掲載

・ インターネット上のショッピングサイ ト・オークションサイトを利用させるサー ビス

・ ソフトウエアやゲームアプリなどをイン ターネット上で販売するための場所(WEB サイト)を利用させるサービス

・ インターネットを介して行う宿泊予約、 飲食店予約サイトへの掲載等(宿泊施設、 飲食店等を経営する事業者から掲載料等を 徴するもの)

・ インターネットを介して行う英会話教室 ・ 電話を含む電気通信回線を介して行うコ

ンサルテーション など

【電気通信利用役務の提供に該当しない取引の例】 ・ 電話、FAX、電報、データ伝送、イン

ターネット回線の利用など、他者間の情報 伝達を単に媒介するサービス(通信) ・ ソフトウエアの制作等

 ソフトウエアの制作を国外事業者に依頼 し、その成果物の受領や制作過程の指示が インターネット等を介して行われる場合が あるが、インターネット等を介した成果物 の受領等の行為は、ソフトウエア制作とい う役務の提供に付随した行為であり、電気 通信利用役務の提供には該当しない。 ・ 国外に所在する資産の管理・運用等(ネ

ットバンキングを含む。)

 インターネット等を介して資産の運用、 資金の移動等の指示、状況・結果報告等が 行われる場合があるが、当該結果報告等の 行為は資産の管理・運用という役務の提供

に付随した行為であり、電気通信利用役務 の提供には該当しない。ただし、クラウド 上の資産運用ソフトの利用料金などを別途 受領している場合には、その部分は、電気 通信利用役務の提供に該当する。

・ 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等  インターネット等を介して情報の収集・ 分析等の結果報告等が行われる場合がある が、当該結果報告等の行為は、情報の収 集・分析等という役務の提供に付随した行 為であり、電気通信利用役務の提供には該 当しない。ただし、他の事業者の依頼によ らずに自身が収集・分析した情報を閲覧さ せたり、インターネット等を通じて利用さ せたりするサービスは、電気通信利用役務 の提供に該当する。

・ 国外の法務専門家等に依頼して行う国外 での訴訟遂行等

 インターネット等を介して訴訟の状況報 告等が行われる場合があるが、当該状況報 告等の行為は、国外における訴訟遂行とい う役務の提供に付随した行為であり、電気 通信利用役務の提供には該当しない。 ② 「著作物の利用の許諾に係る取引を含む。」

の意義について

(9)

との指摘があります。

 こうした点を踏まえ、消費税法第 2 条第 1 項第 8 号の 3 の規定においては、「電気通信 回線を介して行われる著作物の提供その他の 電気通信回線を介して行われる役務の提供」 に、「当該著作物の利用の許諾に係る取引を 含む。」と規定することによって、消費税法 の適用上、役務の提供に該当することを明確 にしています。

 なお、消費税法第 2 条第 2 項においては、 「資産の貸付け」から「電気通信利用役務の 提供に該当するもの」を除くことによって、 消費税法の適用上、著作物の提供が著作権・ 著作隣接権の譲渡・貸付けに当たる場合と役 務の提供に当たる場合との整理がなされてい ます。

③ 内外判定における「居所」について  消費税法第 4 条第 3 項第 3 号に定める「居 所」については、「現在まで引き続いて 1 年 以上居住する場所」と規定されていますが、 これは、所得税法に規定する「居住者」(所 法 2 ①三)の概念と整合性を持たせるととも に、旅行者やビジネスマン等が短期間滞在す る場所をもって内外判定を行うといった煩雑 さを避けることを目的としています。  実務においては、電気通信利用役務の提供 を行う事業者が、通常、把握することが可能 な客観的な基準(顧客が申し出た住所地と決 済で利用するクレジットカードの発行国等を 照合するなど、住所等を判断することにつき 合理性が認められる方法)に基づき判断すれ ば足りると考えられます。

 なお、住所がなく、かつ、現在まで引き続 いて 1 年以上居住する場所がない者に対して 行われる電気通信利用役務の提供については、 消費税法第 4 条第 3 項但し書の規定により、 “国内以外の地域”で行われたものとされます。 ④ 「特定仕入れ」に係る内外判定基準について

 下記(「 課税方式(課税対象及び納税 義務者)の見直し」で解説)のいわゆるリバ

ースチャージ方式による課税対象取引である 「特定仕入れ」(事業として他の者から受けた 特定資産の譲渡等(注 1 )をいいます。以下 同じです。)が国内で行われたか否かの判定 については、当該特定仕入れとして他の者か ら受けた「事業者向け電気通信利用役務の提 供」に係る消費税法第 4 条第 3 項第 3 号に定 める場所が、国内にあるか否かによって行う こととされました(消法 4 ④)。

(注 1 ) 特定資産の譲渡等とは、事業者向け電 気通信利用役務の提供及び特定役務の提供 をいいますが、具体的には、下記「 課 税方式(課税対象及び納税義務者)の見直 し」を参照ください。

(注 2 ) 平成28年 4 月 1 日以後における「特定 仕入れ」には、他の者から受けた「特定役 務の提供」(下記)が含まれることとなりま すが、当該特定仕入れに係る内外判定につ いては、特定役務の提供に係る改正前と同 様その役務の提供が行われた場所(当該他 の者から受けた特定役務の提供に係る消費 税法第 4 条第 3 項第 2 号に定める場所が、 国内にあるか否か)によって行うこととな ります。

⑵ 課税方式(課税対象及び納税義務者)の見直し  上記のとおり、内外判定基準の見直しに伴い、 国外の事業者が国境を越えて日本の事業者や消 費者に対して行う電気通信利用役務の提供につ いては、国内取引として課税の対象となります。 しかし、日本国内に何らの拠点も持たない国外 の事業者に対して消費税の申告納税義務を課す 従来の制度では、適正な税務執行の確保に自ず と限界があると考えられます。

(10)

ける事業者(課税仕入れを行った事業者)に納 税義務を課すいわゆるリバースチャージ方式の 対象とする改正が行われました。

 具体的には、消費税法第 4 条第 1 項(課税の 対象)及び第 5 条第 1 項(納税義務者)を次の ように改正することで対応しています。 (注) 本稿においては、「電気通信利用役務の提

供」から「事業者向け電気通信利用役務の提 供」を除いた概念について、「消費者向け電気 通信利用役務の提供」と記述していますが、 法令に定義された用語ではありません。「事業 者向け電気通信利用役務の提供」が限定的に 定義されている結果、この「消費者向け電気 通信利用役務の提供」という概念には、事業 者が利用する様々なサービスも含まれ得るこ とに留意が必要です。

〔課税対象の見直し〕

 課税対象である資産の譲渡等から“特定資 産の譲渡等に該当するもの”を除くとともに、 「特定仕入れ」を課税対象に加えることとさ

れました(消法 4 ①)。

 資産の譲渡等から除かれる「特定資産の譲 渡等」については、消費税法第 2 条第 1 項第 8 号の 2 に定義が置かれており、「事業者向 け電気通信利用役務の提供」(消法 2 ①八の 四)及び「特定役務の提供」(消法 2 ①八の 五)をいうとされています。

「事業者向け電気通信利用役務の提供」(消 法 2 ①八の四)

 国外事業者が行う電気通信利用役務の提 供のうち、当該電気通信利用役務の提供に 係る役務の性質又は当該役務の提供に係る 取引条件等から当該役務の提供を受ける者 が通常事業者に限られるものが該当します。

「特定役務の提供」(消法 2 ①八の五)  資産の譲渡等のうち、国外事業者が行う 演劇その他の政令で定める役務の提供(電 気通信利用役務の提供に該当するものを除

きます。)が該当するとされており、政令 では次のように規定されています。 (参考) 消費税法施行令

(特定役務の提供の範囲)

第 2 条の 2  法第 2 条第 1 項第 8 号の 5 に規 定する政令で定める役務の提供は、映画若 しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人 又は職業運動家の役務の提供を主たる内容 とする事業として行う役務の提供のうち、国 外事業者が他の事業者に対して行う役務の 提供(当該国外事業者が不特定かつ多数の 者に対して行う役務の提供を除く。)とする。 (注) 特定役務の提供とは、国外事業者であ

るタレントやスポーツ選手等が行う役務 の提供をいいますが、当該特定役務の提 供に係る改正については、後述の「  国外事業者による芸能・スポーツ等の役務 の提供に係る課税方式の見直し」を参照 ください。

「国外事業者」(消法 2 ①四の二)

 国外事業者とは、所得税法に規定する 「非居住者」(所法 2 ①五)である個人事業 者及び法人税法に規定する「外国法人」 (法法 2 四)をいいますが、所得税法及び 法人税法で既に確立している定義を引用す ることで、事業者及び執行当局における判 断を容易にしています。

 所得税法に規定する非居住者とは、「居 住者以外の個人」をいいますが、居住者に ついては、「国内に住所を有し、又は現在 まで引き続いて 1 年以上居所を有する個 人」とされています(所法 2 ①三)。また、 法人税法に規定する外国法人とは、「内国 法人以外の法人」をいいますが、内国法人 については、「国内に本店又は主たる事務 所を有する法人をいう。」とされています (法法 2 三)。

(11)

 納税義務の対象となる課税資産の譲渡等か ら“特定資産の譲渡等に該当するもの”を除 くとともに、課税仕入れのうち特定仕入れに 該当するもの(以下「特定課税仕入れ」とい います。)を行った事業者に対して、消費税の 納税義務を課すこととされました(消法 5 ①)。  なお、電気通信利用役務の提供のうち事業 者向け電気通信利用役務の提供に該当しない もの(消費者向け電気通信利用役務の提供) については、従来どおり、国内において当該 役務の提供を行った事業者が納税義務者とな ります。

「特定課税仕入れ」(消法 5 ①)

 「特定課税仕入れ」とは、課税仕入れの うち特定仕入れに該当するものをいいます。 また、「特定仕入れ」は、事業として他の 者から受けた特定資産の譲渡等、すなわち 国外事業者から受けた事業者向け電気通信 利用役務の提供及び特定役務の提供が該当 します。

 したがって、国外事業者から受けた事業 者向け電気通信利用役務の提供及び特定役 務の提供については、これらの役務の提供 (特定資産の譲渡等)を受けた課税事業者 に納税義務が発生する(リバースチャージ 方式の対象となる)こととなります。

① 事業者向け電気通信利用役務の提供(消法 2 ①八の四)の範囲

 「事業者向け電気通信利用役務の提供」は、 「電気通信利用役務の提供」のうち、その取

引に係る納税義務者が役務の提供を行う事業 者から、役務の提供を受ける事業者(仕入れ を行う事業者)に転換される役務の提供(リ バースチャージ方式の対象となる役務の提 供)の範囲を規定するものです。具体的には、 「国外事業者が行う電気通信利用役務の提供

のうち、当該役務の提供に係る“役務の性 質”又は当該役務の提供に係る“取引条件

等”から、当該役務の提供を受ける者が通常 事業者に限られるものをいう。」とされてい ます。

 したがって、インターネット等の電気通信 回線を介して提供されるサービスの性質、又 はサービスの提供に係る取引条件等(契約内 容など)から、その提供先が事業者に限られ ると判断されれば、「事業者向け電気通信利 用役務の提供」に該当する一方、電子書籍や 音楽の配信等のように消費者による購入・利 用が制限されていない取引は、「事業者向け 電気通信利用役務の提供」には該当しません。 イ 事業者向け電気通信利用役務の提供の例

イ “役務の性質”から、当該役務の提供 を受ける者が通常事業者に限られるもの の例

・ ネット広告の配信のように、役務の 性質から当該役務の提供を受ける者が 通常事業者に限られるもの

・ ソフトウエアやゲームアプリなどを インターネット上で販売するための場 所(WEBサイト)を利用させるサー ビス

・ インターネットを介して行う宿泊予 約、飲食店予約サイトへの掲載等(宿 泊施設や飲食店等を経営する事業者に 対するサービス)

ロ “取引条件等”から、当該役務の提供 を受ける者が通常事業者に限られるもの の例

(12)

なく、契約の相手方(サービスの提供 を受ける者)が事業者であることを確 認した上で、個別の取引条件を定めて 締結する契約をいう。)に基づいて提 供されるサービス

 すなわち、サービスの客観的な性質で “事業者向け”に限定できない取引であっ ても、相対で個別に契約を締結し、その契 約に基づき一対一で取引を行っており、役 務の提供を受ける者が事業者であることが 明確な取引であれば、「事業者向け電気通 信利用役務の提供」に該当することになり ます。

ロ 相手に尋ねるだけでは“事業者向け”に 該当しない例

 例えば、インターネットから申込みを受 け付けるようなクラウドサービス等におい て、“事業者”か“消費者”かを尋ねた上 で、事業者を選択した者に限ってサービス を提供するケース(購入者側の判断に委ね ている場合)がありますが、そうした方法 だけでは消費者等の利用を制限している (“取引条件等”から、当該役務の提供を受 ける者が通常事業者に限られる)ことには なりません。

ハ 事業者向け電気通信利用役務の提供が限 定的に規定された理由

 上記のとおり、電気通信利用役務の提供 のうち、「事業者向け電気通信利用役務の 提供」に該当するものの範囲が限定的に規 定されているため、結果として、「消費者 向け電気通信利用役務の提供」には、事業 者も利用する様々なサービスが含まれるこ ととなります。

 こうした規定振りとされた理由について は、平成26年 6 月27日に政府税制調査会に 提出された資料(総10- 4 ) 7 頁に記述が あります。

(参考) 税制調査会資料〔国境を越えた役務の提 供に対する消費税について〕―制度案に

ついて―(抜粋) (前略)

(注) 「事業者向け取引」と「消費者向け取 引」の定義について

 今般の見直しに当たっては、現行消費税 制度上、課税事業者番号制度がないことを 前提に、役務の性質や取引条件等により事 業者向け取引と消費者向け取引とを区別し た上で、消費者向け取引については、当該 役務の提供を行う国外事業者に申告納税義 務を課すこととしている。これは、国外事 業者から電子書籍や音楽などのデジタルコ ンテンツの提供を受ける消費者に対して、 申告納税義務を課すことが現実的ではない ためである。

 他方、仮に、消費者向け取引の定義を「役 務の提供を受ける者が消費者であることが 明らかなもの」とし、事業者向け取引の定 義を「消費者向け取引に該当しないもの」 とした場合には、購入者の大半が消費者で ありながら、一部に事業者が含まれる可能 性のある電子書籍等の提供については、す べて事業者向け取引に該当することとなり (リバースチャージ方式の対象)、国外事業 者が消費者に提供した電子書籍等に課税す ることができず、現行制度において生じて いる問題(最終的な税負担に差異が生じ、 国内外の事業者間で競争条件に歪みが生ず る問題)の解決にはつながらない。  こうした観点から、今般の見直しに当た っては、事業者向け取引を限定的に定義(役 務の提供を受ける者が事業者であることが 明らかなものと定義)した上で、それ以外 の取引については国外事業者申告納税方式 の対象としている。

② 事業者向け電気通信利用役務の提供を行う 国外事業者の義務

(13)

は、消費税の課税対象から除外されているた め、当該役務の提供を行う国外事業者に消費 税の納税義務は発生しません(消法 4 ①、 5 ①)。しかし、当該国外事業者に対しては、 その取引に際して、当該役務の提供を受ける 国内事業者にリバースチャージによる納税義 務が発生する旨を、あらかじめ表示すること が義務付けられています(消法62)。  具体的には、事業者向け電気通信利用役務 の提供に係るホームページ、パンフレットな ど取引条件を提示する際に、その旨を表示す ることが求められます。

 なお、本規定による表示の有無は、当該事 業者向け電気通信利用役務の提供を受ける国 内事業者の納税義務(リバースチャージによ る納税義務)には、影響しません。

(注) 消費税法第62条(特定資産の譲渡等を行 う事業者の義務)の規定は、国内において 特定資産の譲渡等(リバースチャージ方式 の対象となる資産の譲渡等)を行う事業者 に対して一定の表示を義務付けるものです。 この「特定資産の譲渡等」とは、上記のと おり、「事業者向け電気通信利用役務の提 供」が該当しますが、平成28年 4 月 1 日か らは、後述する「特定役務の提供」(消法 2 ①八の五)が含まれることとなりますので 注意が必要です。

③ 特定課税仕入れ(いわゆるリバースチャー ジ)に係る課税標準

 特定課税仕入れに係る消費税の課税標準に ついては、当該特定課税仕入れに係る支払対 価の額(対価として支払い、又は支払うべき 一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利そ の他経済的な利益の額をいいます。)とされ ています(消法28②)。したがって、他の国 内取引に係る課税標準の計算と異なり、税抜 計算を行う必要はありませんので留意が必要 です。

 これは、国内事業者における特定課税仕入 れは、“国外事業者が行う事業者向け電気通

信利用役務の提供”に係るものであって、当 該国外事業者に消費税の納税義務が発生しな いためです。

④ 特定課税仕入れを行った国内事業者に対す る経過措置等

イ “国外事業者による表示の有無”と“リ バースチャージによる納税義務”の関係  特定課税仕入れを行った(事業者向け電 気通信利用役務の提供を受けた)国内事業 者(課税事業者に限ります。)は、当該特 定課税仕入れについて消費税の納税義務が 発生しますが(消法 4 ①、 5 ①、 9 ①)、 国外事業者による上記②の表示(消法62) の有無は、国内事業者における特定課税仕 入れに係る納税義務に影響を与えません。 ロ 課税売上割合95%以上の課税期間におけ

る経過措置

 課税売上割合が95%以上である課税期間 については、当分の間、その課税期間中に 行った特定課税仕入れはなかったものとし て消費税法の規定を適用する旨の経過措置 が設けられています(改正法附則42)。  したがって、課税売上割合が恒常的に95 %以上となる事業者においては、リバース チャージに係る新たな事務負担は発生しな いと考えられますが、課税売上割合は、そ の課税期間が終了するまで確定しないこと から、特定課税仕入れに該当する仕入れに ついては、事後的に確認できるようにして おくことが望ましいと考えられます。  また、簡易課税制度の適用を受ける課税 期間においても同様の経過措置が設けられ ています(改正法附則44②)。

(14)

⑶ 消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた 国内事業者における仕入税額控除の制限  電気通信利用役務の提供が国内で行われたか 否かの判定は、その提供を受ける者の住所等で 行うこととされたため(消法 4 ③三)、国外事 業者が、国内の事業者や消費者に対して行う 「消費者向け電気通信利用役務の提供」につい ては、国内取引として当該国外事業者に申告納 税義務が発生します。また、当該消費者向け電 気通信利用役務の提供を受けた国内の課税事業 者においては、課税仕入れが発生し、原則とし て、仕入税額控除制度の適用を受けることにな ります(消法30①)。

 しかし、納税義務者である国外事業者は通常 執行管轄の及ばない国外に所在することから、

税務執行を通じて適正な申告納税の履行を促す ことには自ずと限界があり、結果として、国外 事業者による納税なき、国内の課税事業者によ る仕入税額控除制度の適用という新たな問題の 発生が懸念されます。改正の結果、新たに課税 上の問題が生じることとなれば、消費税制度に 対する信頼を却って損なうおそれもあることか ら、平成27年度税制改正においては、国内にお いて行った課税仕入れのうち、国外事業者から 受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」 については、当分の間、仕入税額控除制度の適 用対象外とする経過措置が設けられました(改 正法附則38①本文)。

 他方で、適正な申告納税を行う蓋然性が高い と考えられる一定の国外事業者から提供を受け

電気通信利用役務の提供に係る判定フロー

【国内事業者が日本国内において役務の提供を受ける場合】

【国外事業者が日本国内において役務の提供を行う場合】

yes

no yes

電気通信利用役務 の提供に該当する か

電気通信利用役務の提 供に該当するか

(注) 消法第 6 条第 1 項の規定により非課税となる取引は考慮していない。

 国内の事業者等が行う電気通信利用役務の提供は、国内の事業者等に対して行うものは課税資産の譲渡等となり、 国外の事業者等に対して行うものは国外取引(不課税)となる。

相手は国外事業 者であるか

相手は登録国外 事業者であるか

仕入税額控除可

仕入税額控除不可

仕入税額控除可

課税資産の譲渡等 (申告納税義務あり)

課税資産の譲渡等 (申告納税義務あり) 登録国外事業者とし

て登録しているか

リバースチャージ (特定課税仕入れ)

no yes no no no no no yes yes yes no yes no yes no yes yes

役 務 の 性 質 か ら、その役務の 提供を受ける者 が通常事業者に 限られているか

(広告など) 取 引 条 件 等 から、その役務の 提供を受ける者 が通常事業者に 限られているか

(個別契約など) 請求書等に登録 番号及び役務の 提供を行った側 に申告納税の義 務がある旨の記 載があるか

特定資産の譲渡等 (仕入れ側に納税 義務がある旨を取 引の際にあらかじ め表示)

課税資産の譲渡等 (申告納税義務及 び取引相手に登録 番号等を記載した 請求書等の交付義 務あり) 取引条件等から、そ

の役務の提供を受け る者が通常事業者に 限られているか(個 別契約など) 役務の性質から、そ

の役務の提供を受け る者が通常事業者に 限られているか(広 告など)

《事業者向け電気通信利用役務の提供》

《事業者向け電気通信利用役務の提供》

《消費者向け電気通信 利用役務の提供》 《消費者向け電気通信

(15)

る「消費者向け電気通信利用役務の提供」につ いては、改正法附則第38条第 1 項本文の規定は 適用しない、すなわち、仕入税額控除制度の適 用を認めることとされています(改正法附則38 ①但し書)。

 具体的には、国税庁長官による登録を受けた 国外事業者(以下「登録国外事業者」といいま す。)から受けた「消費者向け電気通信利用役 務の提供」については、一定の帳簿及び請求書 等の保存を要件として、仕入税額控除制度の適 用が認められます(改正法附則38①但し書、② ③)。

① 消費者向け電気通信利用役務の提供につい て

 平成27年度税制改正において、「消費者向 け電気通信利用役務の提供」という用語が定 義されているわけではありません。

       (消法 2 ①八の 三)から        (消法 2 ①八の四)を除いた概念として本稿

で用いている用語です。したがって、「消費 者向け電気通信利用役務の提供」の中には、 事業者が利用する電気通信利用役務の提供が 含まれ得ること、その提供者には国外事業者 だけではなく国内事業者も存在することに留 意が必要です。

 なお、本経過措置の対象は、国外事業者か ら受けた消費者向け電気通信利用役務の提供 に限られています(改正法附則38①本文)。 ② 登録国外事業者

 「登録国外事業者」とは、改正法附則第39 条第 1 項の規定により国税庁長官の登録を受 けた国外事業者をいいますが、その詳細につ いては、下記「 登録国外事業者制度」を 参照ください。

③ 仕入税額控除制度の適用を受けるための要 件

 消費税法第30条第 1 項(仕入れに係る消費 税額の控除)の規定の適用にあたっては、一

定の帳簿及び請求書等の保存が要件とされて いますが(消法30⑦)、登録国外事業者から 提供を受けた「消費者向け電気通信利用役務 の提供」については、改正法附則第38条第 2 項の規定による読替え後の帳簿及び請求書等 の保存が必要となります。

 具体的には、通常の課税仕入れに係る帳簿 及び請求書等の記載事項に加え、帳簿につい ては、登録国外事業者の「登録番号」が、請 求書等については、「登録番号」と「当該消 費者向け電気通信利用役務の提供を行った国 外事業者が納税義務者である旨」が、それぞ れ記載されている必要があります。

〔読替え後の帳簿の記載事項〕

イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及 び登録番号

ロ 課税仕入れを行った年月日

ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容 ニ 課税仕入れに係る支払対価の額 〔読替え後の請求書等の記載事項〕

イ 書類の作成者の氏名又は名称及び登録 番号

ロ 課税資産の譲渡等を行った年月日 ハ 課税資産の譲渡等の内容

ニ 課税資産の譲渡等の対価の額

ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は 名称

へ 課税資産の譲渡等を行った者が消費税 を納める義務がある旨

(注) への記載事項は、電気通信利用役務 の提供を受ける国内事業者に対して、 当該電気通信利用役務の提供を行った 国外事業者に納税義務が生じる取引 (消費者向け電気通信利用役務の提供)

である旨の通知を求めるものです。 ④ 電磁的な記録による請求書等記載事項の保

存について

 登録国外事業者から受けた「消費者向け電 気通信利用役務の提供」について仕入税額控 電気通信利用役務の提供

(16)

除制度の適用を受けるためには、登録国外事 業者から交付を受けた一定の請求書等の保存 等が必要となりますが、この請求書等につい ては、請求書等の記載事項に係る電磁的記録 (電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚 によっては認識することができない方式で作 られた記録であって、電子計算機による情報 処理の用に供されるもの)の保存をもって代 えることができます(改正法附則38③)。  なお、この電磁的記録の保存に当たっては、 当該電磁的記録の保存場所に、当該電磁的記 録の電子計算機処理(電子計算機を使用して 行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修 正、更新、検索、消去、出力又はこれらに類 する処理をいいます。)の用に供することが できる電子計算機、プログラム、ディスプレ イ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を 備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの 画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な 状態で、速やかに出力することができるよう にしなければならないとされています(改正 消規則附則 2 ①)。

⑷ 登録国外事業者制度

 上記のとおり、国外事業者から受けた消費者 向け電気通信利用役務の提供については、原則 として、仕入税額控除制度の適用が認められな いこととされていますが(改正法附則38①本 文)、登録国外事業者から受けるものについて は、一定の請求書等の保存等を要件に、その適 用が認められています(改正法附則38①但し書)。  登録国外事業者制度は、消費税の申告納税を 適正に履行する蓋然性が高いと認められる国外 事業者に対して、国税庁長官が登録番号を付与 する制度です(改正法附則39)。

① 登録国外事業者の申請

 国税庁長官の登録を受けようとする国外事 業者(課税事業者に限ります。)は、次に掲 げる事項を記載した申請書に、消費者向け電

気通信利用役務の提供に係る事務所等の登記 事項証明書等又は消費税に関する税務代理人 の税務代理権限証書を添付して、納税地を所 轄する税務署長を経由して、国税庁長官に提 出する必要があります(改正法附則39②、改 正消規則附則 3 ①②)。

〔申請書記載事項〕

イ 申請者の氏名又は名称(代表者の氏名 を含む。)(日本語及び英語で記載) ロ 納税地(納税地と住所等とが異なる場

合には、納税地並びに日本語及び英語で 記載した住所等)

ハ 消費者向け電気通信利用役務の提供に 係る事務所等(改正法附則39⑤一)の所 在地又は税務代理人(改正法附則39⑤ 一)の氏名若しくは名称並びに事務所の 名称及び所在地

ニ その他参考となるべき事項 ② 登録の可否について

 ①の申請書の提出を受けた国税庁長官は、 当該申請に係る国外事業者(課税事業者に限 ります。)が次に掲げる要件のいずれかに該 当する場合は、その登録を拒否することがで きるとされています(改正法附則39⑤)。 イ 国内に消費者向け電気通信利用役務の提

供に係る事務所等がないこと又は消費税に 関する税務代理人がいないこと。

ロ  国 税 通 則 法 第117条 第 1 項( 納 税 管 理 人)の規定の適用を受ける国外事業者が、 納税管理人を定めていないこと。

ハ 現に国税の滞納があり、かつ、その滞納 額の徴収が著しく困難であること。 ニ 登録国外事業者の登録を取り消され(下

記③ニ~ヘまでのいずれかに該当した場合 に限ります。)、その取消しの日から 1 年を 経過していない者であること。

③ 登録取消しについて

(17)

録を取り消すことができるとされています (改正法附則39⑥)。

イ 国外事業者に該当しなくなったこと。 ロ 登録に係る消費者向け電気通信利用役務

の提供に係る事務所等が国内に所在しなく なったこと、又は消費税の確定申告書の提 出期限までに、当該申告に係る税務代理権 限証書の提出がないこと。

ハ  国 税 通 則 法 第117条 第 1 項( 納 税 管 理 人)の規定の適用を受ける国外事業者が、 納税管理人を定めていないこと。

ニ 消費税の期限内申告書の提出がなかった ことについて正当な理由がないと認められ ること。

ホ 現に国税の滞納があり、かつ、その滞納 額の徴収が著しく困難であること。 ヘ 事実を仮装して記載した請求書等を交付

したこと(電磁的記録の提供を含む。)。 ④ 国外事業者登録簿の登載事項の公表

 登録国外事業者の登録は、国外事業者登録 簿に、

イ 氏名又は名称

ロ 住所若しくは居所又は本店若しくは主た る事務所の所在地

ハ 消費者向け電気通信利用役務の提供に係 る事務所等を有する場合には、その所在地 ニ 登録番号

ホ 登録年月日

を登載して行うこととされています(改正法 附則39④、改正消令附則 7 ①)。

 また、国税庁長官は、国外事業者登録簿に 登載された事項を、インターネットを利用し て公衆の閲覧に供することとされています (改正法附則39④、改正消令附則 7 ③)。 ⑤ 登録国外事業者に対する事業者免税点制度

の適用除外

 国税庁長官に対して登録申請ができる国外 事業者は、消費税法第 9 条第 1 項本文の規定 により消費税を納める義務が免除される事業

者以外の者に限られています(改正法附則39 ①)。また、登録を受けた翌期以降において も、登録国外事業者である間は、国内におい て行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れ について、同項本文の規定は適用しないこと とされています(改正法附則39⑩)。  すなわち、その課税期間の基準期間におけ る課税売上高及び特定期間における課税売上 高が1,000万円以下であったとしても、登録 国外事業者である間は、事業者免税点制度の 適用はありません。

⑥ 登録国外事業者の義務 イ 請求書等の交付義務

 国内事業者に対して消費者向け電気通信 利用役務の提供を行った登録国外事業者に 対しては、消費者向け電気通信利用役務の 提供を受ける国内事業者からの求めに応じ て、一定の請求書等を交付する義務が課さ れています(改正法附則38④)。

 したがって、登録国外事業者は、当該国 内事業者の求めに応じて、当該国内事業者 における仕入税額控除制度の適用要件を満 たす以下に掲げる内容を記載した請求書等 を交付する必要があります。なお、当該請 求書等の交付については、以下に掲げる請 求書等記載事項に係る電磁的記録を提供す ることでも差し支えありません。

〔請求書等の記載事項〕(消法30⑦⑨一、 改正法附則38②④)

イ 書類の作成者(登録国外事業者)の 氏名又は名称及び登録番号

ロ 課税資産の譲渡等(消費者向け電気 通信利用役務の提供)を行った年月日 ハ 課税資産の譲渡等(消費者向け電気

通信利用役務の提供)の内容

(18)

ホ 請求書等の交付を受ける事業者(国 内事業者)の氏名又は名称

ヘ 課税資産の譲渡等を行った者(登録 国外事業者)が消費税を納める義務が ある旨

(注) ヘの記載事項は、電気通信利用役 務の提供を受ける国内事業者に対し て、当該電気通信利用役務の提供を 行った国外事業者に納税義務が生じ る取引(消費者向け電気通信利用役 務の提供)である旨の通知を求める ものです。

ロ 請求書等に記載誤りがあった場合の修正 請求書等の交付義務

 国内事業者に対して交付した上記イの請 求書等に誤りがあった場合には、修正した 請求書等を交付する義務が課されています (改正法附則38⑤)。

ハ 登録事項に変更があった場合の届出義務  国税庁長官は、国外事業者登録簿に登載 された事項をインターネットを通じて公表 することとされていますが(上記④参照)、 当該国外事業者登録簿に登載された事項に 変更があった登録国外事業者は、その旨を 記載した届出書を、速やかに、納税地を所 轄する税務署長を経由して、国税庁長官に 提出しなければならないこととされていま す(改正法附則39⑧)。

⑦ 登録国外事業者をやめる場合

 登録国外事業者に係る登録の取消しを求め ようとする国外事業者は、その旨を記載した 届出書を、その納税地を所轄する税務署長を 経由して、国税庁長官に提出する必要があり ます(改正法附則39⑪)。

 なお、当該届出書の提出があった場合にお ける登録の効力については、次に掲げる区分 に応じ、それぞれ定める日に失効することと されています。したがって、当該登録の効力 が失効するまでの間は、登録国外事業者とし

ての対応が求められます。 イ ロに該当しない場合

 届出書の提出があった日の属する課税期 間の末日の翌日

ロ 届出書の提出が、課税期間の末日から起 算して30日前の日から当該課税期間の末日 までの間にされた場合

 当該課税期間の翌課税期間の末日の翌日 ⑧ 登録国外事業者が死亡した場合の手続等

 個人事業者である登録国外事業者が死亡し た場合には、事業の継続性や死亡した登録国 外事業者から消費者向け電気通信利用役務の 提供を受ける国内事業者の予見可能性等に配 慮する観点から、以下に掲げる措置が講じら れています(改正法附則40)。

イ 死亡した旨の届出書の提出について  個人事業者(課税事業者に限ります。) が死亡した場合には、その相続人が、消費 税法第57条第 1 項第 4 号(小規模事業者の 納税義務の免除が適用されなくなった場合 等の届出)の規定に基づき、その旨を記載 した届出書を、当該事業者の納税地を所轄 する税務署長に提出しなければならないこ ととされています。

 しかし、死亡した個人事業者が登録国外 事業者である場合には、相続人は、上記届 出書に代えて、死亡した旨を記載した届出 書を、登録国外事業者の納税地を所轄する 税務署長を経由して、国税庁長官に提出し なければならないとされました(改正法附 則40①)。

(19)

ハ みなし登録期間制度について

 死亡した登録国外事業者の事業を承継し た相続人が、国外事業者(既に登録国外事 業者となっている者を除きます。)である 場合には、当該相続のあった日の翌日から、 次のイ又はロに掲げる日のいずれか早い日 までの期間を「みなし登録期間」として、 被相続人である登録国外事業者の登録番号 を当該相続人の登録番号とみなす旨の経過 措置が設けられています(改正法附則40③)。  この経過措置により、「消費者向け電気 通信利用役務の提供」に係る事業を承継し た相続人及び相続前後にわたって被相続人 (相続人)から「消費者向け電気通信利用 役務の提供」を受ける国内事業者が、改正 法附則第38条第 1 項本文の規定の適用によ る不利益を被ることがないようにされてい ます。

イ 相続人が改正法附則第39条第 1 項の登 録を受けた日の前日(自らが登録国外事 業者となった日の前日)

ロ 死亡の日の翌日から 4 月を経過する日 ニ みなし登録期間と登録国外事業者をやめ

ようとする旨の届出書の効力の関係

イ 死亡した登録国外事業者が、死亡前に、 改正法附則第39条第11項の規定による届 出書(登録取消しを求める旨の届出書) を提出していた場合(当該届出書の提出 により、登録の効力が既に失効している 者を除きます。)

 上記ハの「みなし登録期間」について は、当該相続のあった日から、

・ 上記ハイに掲げる日(相続人自らが 登録国外事業者となった日の前日) ・ 上記ハロに掲げる日(被相続人の死

亡の日の翌日から 4 月を経過する日) ・ 死亡した登録国外事業者に係る改正 法附則第39条第11項の規定によりその 登録が失効する日の前日

のいずれか早い日までの期間となります (改正消令附則 8 ①)。

ロ 事業を承継した国外事業者が、みなし 登録期間中に改正法附則第39条第11項の 規定による届出書(登録取消しを求める 旨の届出書)を提出した場合

 改正法附則第39条第11項の規定にかか わらず、みなし登録期間の末日の翌日に 登録の効力は失効することとされていま す(改正消令附則 8 ②)。

⑸ その他の経過措置等

① 特定契約に基づき提供する継続的電気通信 利用役務の提供に係る経過措置

 平成27年 4 月 1 日前に締結した電気通信利 用役務の提供に係る契約(以下「特定契約」 といいます。)に基づいて、平成27年10月 1 日前から引き続き行われる電気通信利用役務 の提供については、改正前の規定が適用され ることとされています(改正消令附則 2 ①本 文)。

 また、特定契約に基づいて、平成27年10月 1 日前から引き続き行われる特定課税仕入れ については、リバースチャージによる納税義 務は発生しないこととされています(改正消 令附則 2 ②本文)。

 なお、いずれの場合についても、平成27年 4 月 1 日以後に当該電気通信利用役務の提供 に係る対価の額又は当該特定課税仕入れに係 る支払対価の額が変更された場合には(増 額・減額にかかわらず)、本経過措置の適用 はなくなりますので注意が必要です(改正消 令附則 2 ①但し書、②但し書)。

② 小規模事業者の納税義務の免除の特例に関 する経過措置

(20)

用役務の提供に係る内外判定基準が見直され る平成27年10月 1 日前後における同制度の適 用については、次に掲げる経過措置が設けら れています。

イ 平成27年10月 1 日の属する課税期間  免税事業者(旧消費税法第 9 条第 1 項本 文の規定により消費税を納める義務が免除 される事業者)については、その課税期間 の基準期間(消法 2 ①十四)又は特定期間 (消法 9 の 2 ①)の初日から改正法が施行 されていたものとして基準期間における課 税売上高又は特定期間における課税売上高 を計算し、当該金額が1,000万円を超える ときは、平成27年10月 1 日から、その課税 期間の末日までの間に行う課税資産の譲渡 等及び特定課税仕入れについては、消費税 法第 9 条第 1 項本文の規定は適用されない こととされています(改正法附則36①)。  また、本経過措置によって課税事業者と しての対応を求められる事業者のうち、当 該計算した基準期間における課税売上高が 5,000万円以下である事業者に対しては、 平成27年10月 1 日を含む課税期間中に「消 費税簡易課税制度選択届出書」をその納税 地を所轄する税務署長に提出することで、 当該課税期間における簡易課税制度の適用 が認められる経過措置が設けられています (改正消令附則 4 )。

 したがって、日本向けに消費者向け電気 通信利用役務の提供を行っている国外事業 者においては、課税売上高が増加すること によって、課税事業者としての対応を求め られる可能性があります。

ロ 平成27年10月 2 日以後に開始する課税期 間

 その課税期間の基準期間における課税売 上高又は特定期間における課税売上高の計 算については、基準期間の初日又は特定期 間の初日から改正法が施行されていたもの

として、これらの課税売上高を計算するこ ととされています(改正法附則36②)。  したがって、日本向けに消費者向け電気 通信利用役務の提供を行っている国外事業 者においては、課税売上高が増加すること によって、課税事業者としての対応を求め られる可能性があります。

 また、国外に向けて電気通信利用役務の 提供を行っている国内事業者(課税事業者 に限ります。)及び国内の拠点から国内に 向けて事業者向け電気通信利用役務の提供 を行っている国外事業者(課税事業者に限 ります。)においては、課税売上高の減少 によって、課税事業者としての対応が不要 となる可能性があります。

(注) 上記イ及びロの経過措置については、 これらの規定にかかわらず、平成27年 4 月 1 日から同年 6 月30日までの期間にお ける課税売上高(平成27年 4 月 1 日から 改正法が施行されていたものとした場合 の課税売上高をいいます。)を用いた簡便 な方法によって判断することを認める特 例が設けられています(改正法附則36③ ④)。なお、この特例は、改正法附則第36 条第 1 項又は第 2 項の規定によって基準 期間における課税売上高又は特定期間に おける課税売上高を計算することにつき 困難な事情があるときを対象としていま すが、困難の程度は問いません。 ③ 事業者別の影響について

参照

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